腸管内異物の治療例

※モノクロですが手術写真を含みます

また11ヶ月と若い、ヨークシャー・テリアの女の子です。
今回は胃および腸切開という手術を行いました。

このわんちゃん、来院のきっかけは避妊手術後の抜糸での来院でした。
体調確認の際に、「そういえば数日前から頻回に吐き気があり元気がない」とのことでしたが、確かにいつもは元気いっぱいなのに元気がない様子でした。
血液検査では炎症数値が上限値を振り切っていました。腹部の超音波検査では十二指腸内に糸状の構造物を認め胃腸内の液体貯留が激しく認められました
紐状構造を含む異物による消化管障害と判断し、緊急手術を実施しました。

開腹をして明らかに固形状の異物がある小腸部位を確認。
切開を行うとプラスチック状の異物に紐が付いており、反対側がどこかに引っかかっている様子でした。
反対側が胃に引っかかっていたことを確認して紐を切除するとギューと引っ張られていた腸が緩みました。
腸の色も一部変色が始まっていたので、もし様子を見ていたら腸の壊死が進んでいた可能性があります。

腸管内に認められた硬い異物 異物の輪郭をイラストで補足
胃から異物を引っ張ると糸がついていた(円の中央のまっすぐな線状のものが糸)
摘出された異物

異物は飼い主様も服に付いていた付属品かも?とあまりピンとくるものは無かったようです。
普段からおもちゃ以外に、家にあるものもかじって遊ぶ様子があったので飲み込んだのかと思われます。

術後は数日の入院を実施しましたが、回復が著しく予定通り帰宅。
退院の日には飼い主さんのお迎えに尻尾をブンブン振って全身で喜んでいた様子がたまらなく可愛かったです!
帰宅後も元気食欲があり、術後の合併症もなく回復してくれました。

今回は胃内および小腸内の異物を切開して摘出しました。
このような2点ひっかかる異物や、胃から出て小腸に入り込んだ異物は内視鏡では対応できません。
飼い主様の知らないうちに異物を飲んでいることもあります。食欲の低下や止まらない嘔吐などがよくある異変ですが、判断に難しい場合は早めに動物病院を受診することをお勧め致します。